2025年4月21日
名前はまだない
第1回。荘子itが「いま一番話したい人と話す」ために福尾匠を誘って始まった初回収録。 二人の出会い、呼び名の問題、哲学とアートは何をする仕事なのか、 そして「ガチャガチャしていることこそがリアル」という番組の底流になる話。 最後まで番組名が決まらない。
話の流れ
- 0:12自己紹介と、この番組が始まった理由荘子itが「いま一番話したい人に話をしよう」と福尾に声をかけたところから始まった。
- 0:40二人の出会いSNS上では2017〜18年から相互認識。実際に会ったのは『非美学』の紀伊國屋じんぶん大賞受賞記念トークイベント(千葉雅也との対談)の終演後。
- 4:06呼び方問題ソーシット/荘子くん/シット君。「はしたない名前」をどう呼ぶか。北野武と蓮實重彦の対談の出だしが引き合いに出される。
- 6:40エンストした車のなかで前日、荘子itの車がバッテリー上がりで動かず、バッテリーを充電するために走り続けながら福尾と話した。それがこの番組の実質的な前身。
- 9:16哲学者とアーティストは「核心をつくこと」を言う仕事なのか社会情勢や話題作について「一番確信をついたこと」を言う職業だと思われているが、本当はそうではないのに居直っているのではないか、という問題提起。
- 15:18『非美学』が言っていること哲学は外側から意味づけ・価値づけ・解釈するものではなく、他の創作と同列の別の職能である。
- 18:16職業としての嘘哲学者もアーティストもほぼ嘘つきの職業。ただし嘘を否定的にではなく最大限ポジティブに捉える。
- 19:40読んでいるうちに5センチ浮いてしまう『眼がスクリーンになるとき』はロジカルに進むのに、いつのまにか妄想とも評論ともつかない場所に行き着く。荘子itはそれを自分の音楽と同じことだと感じた。
- 22:47東浩紀と千葉雅也を並べたかった『非美学』は千葉雅也と東浩紀を間接的に並べるために書かれたが、結果的に「お別れの本」になった。
- 30:52菊地成孔と「コーシット」Dos Monos 1stの際に菊地成孔が荘子itに「コーシット」と逆襲名した話から、DCPRG『構造と力』と図式的な創作の話へ。
- 34:00構造は後からついてくるバークリーメソッド的に構造から作るのではなく、まだ分析の言葉がない現象から食らったものをそのまま作品にする。番組タイトル「名前はまだない」に通じる。
- 36:54サンプリングが起こす事故ピアノのコードをサンプリングしてピッチを動かすと和音がまるごと平行移動し、音楽理論を意図せず外れる。無教養と機械が生んだ歪みをのちに教養の側が取り入れ直す。
- 42:48ガチャガチャしていることこそがリアル日記は昨日の続きを今日書くわけではない。統一感のなさこそがリアルだという逆説。ヒップホップの「リアル」観への異議も含む。
- 49:00ドブ板選挙としてのトークイベント数十人のイベントでサインをして2、3分喋る。数字には出ないが5年後10年後に覚えていてくれる人を作る。売れないと途端にカルト化する危うさも。
- 55:24番組名がまだない仮題は「荘子it・福尾匠 全対話」と「ポストポストアポカリプス(PPAP)」。結局この回では決まらなかった。
- 59:20告知福尾のフィロシャピー(月額ブログ・講座)、Dos Monosの新作と5月9日渋谷Spotify O-EASTでの初ワンマン。
この回で出てきた言葉
- 東浩紀荘子itが10代で読んだ先行世代。
- アンチ・オイディプス荘子itの読み方は「フロイトやラカンはもちろんすげえ、あれは一つの理論体系だ、 でもそれだけじゃねえだろ、それで満足すんなよお前ら、もっと熱くなれよ」。
- 魚豊荘子itが子育てと制作の合間を縫って「二人だけで会って話した」数少ない相手として、 福尾と並んで名前が挙がる。
- ガチャガチャ感こそがリアルリアルなものは透明でシンプルなフォーマットに収まると思われがちだが、 むしろバラバラでまとまりがないことのほうがリアルだという逆説。
- Gabriel García Márquez福尾がドゥルーズと同時期に読んでいた作家。
- 菊地成孔Dos Monosの1stアルバムの際に、荘子itの名前にひもづけて「コーシット」と逆襲名した。
- 構造と力菊地成孔のバンドDCPRGのアルバム。
- 構造は後からついてくるコード理論やポリリズムの構造から曲を作るのではなく、 まだ分析の言葉がついていない現象から食らった体験をそのまま作品にする。
- 5センチ浮いてしまう最初から高みにあるものを地上から仰ぎ見るのではなく、 同じ目線で読み進め聴き進めていたら、いつのまにか5センチほど宙に浮いてしまっている。
- 職業としての嘘哲学者もアーティストも「ほぼ嘘つき」に近い職業である。
- Gilles Deleuze福尾の研究対象であり、番組全体の底流。
- 人事『非美学』と同じデザイナーに依頼し、姉妹編としてデザインされたエッセイ集。
- 存在論的、郵便的福尾が「墓掘り人」のように引っ張り出してきて、マジックリアリズムに接続する方向へ進めようとした本。
- TaiTanDos Monosのメンバー。
- 千葉雅也『非美学』の紀伊國屋じんぶん大賞受賞記念トークイベントで福尾と対談し、 その終演後に荘子itと福尾が初めて対面した。
- ドブ板選挙トークイベントで数十人を相手に話し、サイン会で一人ひとりと2、3分雑談する。
- 蓮實重彦福尾が怒られている相手として登場する。
- 非美学紀伊國屋じんぶん大賞受賞。
- フィロシャピー福尾が運営する哲学のお店。
- Planet Rockヒップホップ黎明期なのにタイトルに「ロック」が入り、サンプリング元はクラフトワークのテクノ。
- ペンペン草「俺らはアスファルトに咲くペンペン草なんだ」。
- ポストポストアポカリプス番組名の候補として挙がった福尾の言葉。
- 没Dos Monosのメンバー。
- 町山智浩菊地成孔と喧嘩してもその後も同じ場に出ている例として挙げられる。
- 眼がスクリーンになるときドゥルーズ『シネマ』論。
- 山塚アイ前年のリキッドルーム公演でDJを務めた。
- 呼び方問題「ソーシット」は英語のshitが入っていて「はしたない名前」なので、 そこを落として荘子くん・荘子と呼ばれることが多く、逆にはしたなさだけを 取り出して「シット君」と呼ぶ人もたまにいる。
- Robert Glasperヒップホップのビートで生まれたコードの平行移動の感覚を、生演奏でわざとやった人。
- わけのわからなさ複雑さや高度さのことではない。
この回からの引用
はしたない部分を削除するんだったら荘子くんとか荘子とか呼ばれることが多いし。はしたなさだけを取り出したやつはシット君。たまにいるけどねシット君。
→ 呼び方問題
嘘っていうのがめっちゃ大事だと思って。職業ほぼ嘘つきに近い。ただ嘘っていうのを最大限ポジティブに考えるというか。
→ 職業としての嘘
盛り上がってるうちにふわふわと5センチぐらい浮いちゃったみたいな、その感覚を目指してるっていうか。
嘘の魔法にかかった時間っていうかなわけだけど。
難しさっていうか、わけのわからなさよね。それが残ってないとダメだなっていう結論になるの最後。
→ わけのわからなさ
それについて名前がまだ何もないものみたいなものがまだ無限にあって、そういうものから自分がくらった体験をそのまま作品にするっていう。
構造はやっぱり後からついてくるものっていう。それは本当は当たり前のことなんだけど。
その統一感がないことのリアルさみたいなことを面白がるっていう点ではちょっと似てるところもあるのかなと思った。
だからといってガチャガチャ感がオワコンなのではなくて、むしろガチャガチャ感こそがリアルって。それが一番リアルなんじゃねっていう。
本当なんかドブ板選挙っていうか。もうこのイベントで3人でも5人でもいいから、今後5年10年僕のことを覚えてくれる人をこの場で作るみたいな。
→ ドブ板選挙
俺らはアスファルトに割くペンペン草なんだという気持ちでやっていこうみたいな。