それぞれ勝手にやっているからやりとりが発生する
それぞれかってにやっているからやりとりがはっせいする
葉山莉子がTinderでマッチした相手に日記を送っていた——一番多いときは 同時に100人へ——という話から福尾が引き出した形。
番組より
同じ前提を作りましょうっていう目的のコミュニケーションじゃなくて、それぞれ勝手にやってるからこそやりとりが発生するみたいな。そっちモデルの人間関係の方がずっと気楽だよなと思うんだよね。
単純に性的に消費されるわけでもないし、じゃあ1対1でオーダーメイドのやり取りをしましょうっていうわけでもない。その第三の道みたいなものが、日記っていうものによって可能になってる。
この項目について
日記を送ると、相手は自動的にこちらを「人生がある人間」として扱い始めるので、 やりもく除けになる。ところが、コピペで100人に同時送信しているのだから、 差し向かいでお互いの考えを尊重しましょうという人間的コミュニケーションでもない。 単純に性的に消費されるのでもなく、1対1のオーダーメイドでもない—— その第三の道が、日記というものによって可能になっている。 日記は「人間として扱ってくれるための装置」ではあるが、 そこで相手が読み取っている人間性と本当の自分自身はある種切り離されていて、 その安心感がある。相手は勝手に読み取っているだけなのだから。 抽象化すると勉強するとキモくなるとも通じる、と福尾は言う—— 考察が「同じものを見ている」ことを前提にするのに対して、 それぞれ勝手にやっている状態をいかに作るか。 「あなたは今何をしているんですか」「あなたの気持ちを教えてください」という、 同じ前提を作ることが目的のコミュニケーションではなく、 それぞれ勝手にやっているからこそやりとりが発生する。 そっちのモデルの人間関係のほうがずっと気楽だ。 密な空間に引っ張り上げずに疎密の疎の側をそのまま置いておく、 という『置き配的』の主題が、恋愛と日記の側から言い直されている。
この項目が出てくる回
関連項目
- 勉強するとキモくなる千葉雅也『勉強の哲学』(2017年)の核心。
- 入門書のジレンマ福尾が書き始める初の新書のモチベーション。
- アウトリーチという言葉が嫌い大学でよく使われる「専門知を社会に還元しましょう」という言葉。
- 批評はステルス化する批評能力は、もっともらしい批評文を書くという形では達成されなくなっていくのかもしれない。
- 私性の形式化エッセイブームと並行して、「私性」というものの形式そのものが偏り、 固まっていっている——丁寧な暮らし的な何か、ケア的な何か、 あるいは逆にケア的な何かへの違和感、といった方向に。
- 内実が分からないとモンスター化する『ブラックボックス・ダイアリーズ』の捜査官A——伊藤詩織にきわめて協力的だった人物が、 最終的に彼女をひどく傷つける。
- バカし合い込みのリアル頂き女子りりちゃんや国際ロマンス詐欺と並べて考えると面白い、という文脈で。
- 心の交流と性のあいだのジャンプ『青野くんに触りたいから死にたい』が良かったのは、 最初がただの一目惚れ、ただ触りたい・セックスしたいという (しかも女性側からの)性欲でしかないところから始まり、 お互いの人格形成に関わる家族の問題がすごい深度で描かれたあとで、 「深い人
となりで喋られていたこと
韻を踏んでいること
この項目に言及している項目
- 青野くんに触りたいから死にたい冒頭1ページで、ステレオタイプの圧縮によって超高速にラブコメが始まり、 青野くんが速攻で死ぬ。
- TinderレモンケーキエフェクトTinderでマッチした相手に日記を送る、という謎のプロジェクトから生まれた日記本。
- 動物化するポストモダン新書でありながら超平面性やラカン理論の謎の変形までやっていて、しかも10万部いった。
- ブラックボックス・ダイアリーズ荘子itが「めちゃめちゃいい映画」と評する。
- 勉強の哲学勉強は世のノリ・社会のノリから外れて「キモくなる」ことを経由する、 という前提から出発している本。
- 町山智浩再評価『ハート・ロッカー』論争で町山は、作品だけを見れば「どちらとも取れる」ところを、 エンディングテーマにミニストリーを選んでいるという選曲の意図まで読み込んで 「その解釈はありえないんだ」と潰していった。
- 山口一郎サカナクション。